◆ 建物調査診断業務

建物の修繕や改善・改良工事は、建物の現状を正しく把握することから始まります。現象として現れている故障や不具合の原因を突き止めることはもっとも大切なことであると考えています。作成された劣化図面や報告書などは修繕工事の基礎データとなります。

当センターでは、建物調査方針書に基づいて、調査が過不足のない工事計画に繋がることを念頭に、正確かつ客観的な診断を行います。そして、より分かり易い報告書の作成に心がけます。

調査診断要領

1. 調査に入る前に事前に確認する作業があります。

1 調査図面作成調査時の劣化確認位置・測定位置、写真撮影位置(必要に応じて)等を図面表示するための作成です。
その他、調査・診断計画のために、事前に既存図面をご貸与ください。
また、本図面はCADにて作成し、工事記録のデータとしても使用し、修繕記録として長く保存されるものです。
2 修繕履歴等確認本建物の過去における修繕記録や増改築記録などを拝見させていただき、調査の際の参考にさせていただきます。また、管理者の方に現在、見られる故障・損傷などや居住者の方からのご意見等をお聞かせ願います。
3 アンケート文案作成現場調査事前に居住者へのアンケート調査を実施していただき、住民の方々が普段感じておられる問題点の把握をし、同時に建物の維持・保全へ関心をもっていただくために、是非、実施して頂きたくお願いします。 特に各戸のベランダについては居住の方しか見ていませんので、その様子をお応えいただくようアンケート文案作成します。
それらを総合して、事前に管理されている方へのヒアリングをさせていただきますので、ご協力ください。
(文案作成は当センターにて行いますので、その承認とアンケート配布・回収は組合にてお願いします。)
4 ベランダ立入調査についてアンケート文中には、調査期間中ベランダへの立ち入り調査を希望されるかどうかの項目が含まれます。 希望戸数の多い場合は、事前に調整をお願いします。
5 居住者への通知お打ち合わせの上、現地調査日程が決まりましたら、事前に居住者の皆様へその案内をご通知ください。
なお、ご通知前に「調査者の立ち入りの場所、騒音の有無、立ち入り禁止場所の設置」等について当方にご確認ください。


2.現場(マンション)にて調査いたします。

1 外観目視・打診・触診共用部外観の立ち入り可能範囲について、複数の技術者が調査を行います。
この場合の調査する個所は屋上、塔屋、外壁、開放廊下、内外階段、エントランス、外構、その他です。
外観目視とは、建物を外からみて明らかに痛んだ状態であるかどうか、その原因は何かを判断する調査です。また、打診調査とは、タイルやモルタルの部分を叩いてみてその異常個所を見極める方法です。この際、多少の音が発生します。更に触診調査とは塗装膜の劣化の進行具合等を手で触れてみて判断します。
2 ベランダ立入調査アンケート集計等によりベランダの立ち入り調査を行い図面に落とします。
破損したり、剥がれたり、ひび割れたりしている箇所がどんな箇所で、どんな補修をすればよいかを判断するために行います。
3 タイル打診調査タイル貼外壁の場合、剥離して落下するという事故が他のマンションで過去にも見られました。建物の下階の方での落下は、大きな事故には至りませんが、上方からの剥落は人身事故に至る可能性があります。
平成2年に国土交通省が策定した「剥落による災害防止のためのタイル外壁、モルタル塗り外壁診断指針」に基づき、必要に応じて災害危険度の高い壁面(下方を不特定多数の人が往来する壁面)の一部をブランコ足場等で剥離確認調査を実施します。
4 付着力測定調査塗膜の付着強度を建研式引っ張り試験にて測定します。建物の東西南北を測定する予定です。 縦横4センチ角の大きさのアタッチメントを貼り付けて、そこに付着した塗装膜の接着強度を測定するもので、塗装替えの材料選定の参考にします。 塗膜剥離後は塗膜に傷がつきますので、同系色での塗装修復作業を行います。 また、タイル面については、貼替え用タイル予備をご提供ください。
5 中性化測定調査駆体コンクリートの中にはご承知のようにその強度を保つために鉄筋が入っています。 コンクリートは本来アルカリ性ですが、その中に入っている鉄筋が年月を経ることによって錆を生じてきます。 発生した錆は酸性です。酸はアルカリと合体するとことにより中性化されます。
コンクリートの中に入っている鉄筋が空気等に触れることにより錆を生じてくることはコンクリートの劣化につながります。 その劣化の進行具合をコンクリート塊を部分採取して測定を行うのがこの調査の目的です。建物の東西南北でその調査を実施します。 コンクリートの塊を取った部分は当然ながら修復作業を行います。
6 コンクリート圧縮高度測定試験(シュミットハンマー法) コンクリートにはご承知のように水が含まれています。 コンクリートに含まれる水は当然ながら、年々蒸発してゆきます。 水が蒸発してゆくに従って、コンクリートは凝固して行く訳ですが、その固まり具合が圧縮強度です。
建物の駆体コンクリートが年々固まって行き、正常なコンクリート状態であるかどうかを測定するのが圧縮強度測定です。
調査はシュミットハンマーという道具を用いて測定します。 コンクリートの被膜されていない打放部にて行います。 なお、この調査は、目視・打診調査中に必要と判断した場合実施します。
7 シーリング材測定試験 コンクリート建物を作る際に、コンクリートを流し込んでいる光景を見たことがあるとおもいますが、コンクリートを流し込む枠を作り、そこにミキサー車で流し込んで行きます。
しかし、10階建て建物の全部を1回に流し込む訳ではありません。
1階、2階、3階と順番に行います。当然、コンクリートは固まりますので、1階、2階の間には固まりと固まりの間が生じます。 これを打継と言います。固まりと固まりの間に何もしなけければ当然、隙間ができてしまいます。 それを埋めて行くのが目地というものです。 目地とは隙間を埋めて行くものです。建物の隙間はもっとあります。 コンクリートの硬さの間ばかりでなく、部材の違うものの間(コンクリートと金属などの間)などいろいろとあります。 隙間があればそこから雨水などが浸透します。 水は建物にとって大敵です。それを保護するのが目地ということになります。 その他目地に関して目視調査と同時にその硬度測定を行います。 また、建物については目地の切り取り後、試験所にてダンベル物性試験(既存シーリング材の素材の試験)を行います。
既に施工されているシーリング材は外見だけでは、その劣化状況が判明しません。そこで、切り取り、物性試験を行います。 特にタイル建物の場合は目地が雨水の浸透を防ぐ重要な役割を持っています。
8 その他測定試験 現地調査中、著しい故障箇所等がみられた場合は、別途機器測定試験を行います。例えば、鉄筋のかぶり厚が極端に薄いと思われた場合には、RCレーダーにて鉄筋探査調査を行います。 建物のあらゆる部分に測定試験を行うことは、物理的には可能でも、莫大な時間と費用が掛かることは、ご承知のとおりです。
従って、経験値からの判断により、その測定から、全体を把握するという手法は、現実味を帯びた方法と思われます。


3. 理事会・委員会に報告書を提出・説明します。

1 劣化図面作成集計外観目視・打診調査及びベランダ立ち入り調査によって確認された劣化の種類とその数量を図面に落とします。 そして、その集計を東西南北4面の数量として集計し、全体の劣化数量積算の資料といたします。
2 報告書作成アンケート集計を含めて、調査した内容を写真添付の上報告いたします。同時に調査による診断報告も行います。
3 居住者への通知お打ち合わせの上、現地調査日程が決まりましたら、事前に居住者の皆様へその案内をご通知ください。
なお、ご通知前に「調査者の立ち入りの場所、騒音の有無、立ち入り禁止場所の設置」等について当方にご確認ください。